ツイッターに投稿した年末年始ネタの短文をまとめたページです。
当サイトの連載(連載中・済み)のお話のかけらです。
後日談だったり、お話の途中のちょっとした出来事だったり。
「これはあの話のこの時期のことだなー」と補完していただきながら読んでいただくといいかもしれません。
「幽か」「坂道」「飛行少年」「five」「親しい」「みどり」「雪椿」の七編を、時系列順に並べました。
それでは、よろしければどうぞ。
大晦日、澪は山の頂から夜の村を見下ろした。
降り積もる雪に塗り潰される中、明かりが灯る窓がいくつか。あの光のどれかに聖がいる。
「明日も来ます」
彼はそう言い残していった。山の神となって久しいが、こんなにも待ち遠しい正月は初めてだ。
澪はねぐらに丸くなり、ただ朝を待つ。
ベルルックはデスクに突っ伏していた。仕事熱心も度が過ぎると、おれは彼女を揺り起こす。
「年が明けるよ。残業もいいけど、新年くらいちゃんと家に帰りな」
ベルルックはむくりと体を起こして目をこする。
「新年をお前と迎えるのも悪くないな」
「ほんと?」
「に、二度は言わんぞ!」
「あらやんはもちろん、大学ナンバーワン投手でしょ?」
願掛けの中身を聞き出そうと、私は彼を突っつく。彼は爽やかすぎる笑顔で首を振った。
「違うの? じゃあ、何?」
「きっと、土崎さんと同じこと。……だったらいいな」
そう言って歩く彼の足は、文字通り地についていなかった。
「要さん、食べたことありますか?」
初詣の神社、彼女が示すのはわたあめ屋。
「うん。遍さんは?」
「お正月も化け物退治で」
俯く遍さんを放っておけず、俺は大急ぎで一つ買ってきた。
「ごめ……いえ、ありがとう」
幸せそうに頬張る彼女。俺が味わうのは、恐らくそれよりも甘い気分。
隣のファーが「大吉です」と呟いた。次いで、くじを愛おしそうにポケットにしまい込む。
「ロボットもおみくじ信じるの?」
「ええ。実際は、大吉を引く確率など、瞬時に割り出すことができます。でも、今日だけは忘れます」
「いい一年になるといいね」
彼女は、テスさんも、と笑った。
新年の会食を終え、ラグは後片付けを手伝っていた。ルーが気の毒そうに言う。
「煩くて驚いただろ」
「賑やかなのは好きだよ」
孤児院の慎ましやかな年明けも嫌いではなかったが、家族のような皆で過ごすのも楽しかった。
「なら、良かった」
肩を叩く手の温もりもまた、嫌いではない。
「先生、あけましておめでとうございます」
椿の去年と変わらぬ笑顔に胸が踊る。
「正月はどうだった」
「除夜の鐘を聞いたので、気持ちを入れ替えて勉強します」
「……君は偉いな」
椿は無邪気に俺を見上げた。その仕種にくらくらする。
鐘がいくら鳴っても、俺の煩悩は消えてくれない。