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年末年始twnovelまとめ 2011


企画概要

ツイッターに投稿した年末年始ネタの短文をまとめたページです。
当サイトの連載(連載中・済み)のお話のかけらです。
後日談だったり、お話の途中のちょっとした出来事だったり。
「これはあの話のこの時期のことだなー」と補完していただきながら読んでいただくといいかもしれません。

「幽か」「坂道」「飛行少年」「five」「親しい」「みどり」「雪椿」の七編を、時系列順に並べました。
それでは、よろしければどうぞ。


その、幽かな声を

 大晦日、澪は山の頂から夜の村を見下ろした。
 降り積もる雪に塗り潰される中、明かりが灯る窓がいくつか。あの光のどれかに聖がいる。
「明日も来ます」
 彼はそう言い残していった。山の神となって久しいが、こんなにも待ち遠しい正月は初めてだ。
 澪はねぐらに丸くなり、ただ朝を待つ。


坂道の効果に関する最新知見 〜女性研究者を対象として〜

 ベルルックはデスクに突っ伏していた。仕事熱心も度が過ぎると、おれは彼女を揺り起こす。
「年が明けるよ。残業もいいけど、新年くらいちゃんと家に帰りな」
 ベルルックはむくりと体を起こして目をこする。
「新年をお前と迎えるのも悪くないな」
「ほんと?」
「に、二度は言わんぞ!」


飛行少年

「あらやんはもちろん、大学ナンバーワン投手でしょ?」
 願掛けの中身を聞き出そうと、私は彼を突っつく。彼は爽やかすぎる笑顔で首を振った。
「違うの? じゃあ、何?」
「きっと、土崎さんと同じこと。……だったらいいな」
 そう言って歩く彼の足は、文字通り地についていなかった。


five-star 【遍編】

「要さん、食べたことありますか?」
 初詣の神社、彼女が示すのはわたあめ屋。
「うん。遍さんは?」
「お正月も化け物退治で」
 俯く遍さんを放っておけず、俺は大急ぎで一つ買ってきた。
「ごめ……いえ、ありがとう」
 幸せそうに頬張る彼女。俺が味わうのは、恐らくそれよりも甘い気分。


親しい間柄ですか?

 隣のファーが「大吉です」と呟いた。次いで、くじを愛おしそうにポケットにしまい込む。
「ロボットもおみくじ信じるの?」
「ええ。実際は、大吉を引く確率など、瞬時に割り出すことができます。でも、今日だけは忘れます」
「いい一年になるといいね」
 彼女は、テスさんも、と笑った。


みどりのしずく

 新年の会食を終え、ラグは後片付けを手伝っていた。ルーが気の毒そうに言う。
「煩くて驚いただろ」
「賑やかなのは好きだよ」
 孤児院の慎ましやかな年明けも嫌いではなかったが、家族のような皆で過ごすのも楽しかった。
「なら、良かった」
 肩を叩く手の温もりもまた、嫌いではない。


雪椿

「先生、あけましておめでとうございます」
 椿の去年と変わらぬ笑顔に胸が踊る。
「正月はどうだった」
「除夜の鐘を聞いたので、気持ちを入れ替えて勉強します」
「……君は偉いな」
 椿は無邪気に俺を見上げた。その仕種にくらくらする。
 鐘がいくら鳴っても、俺の煩悩は消えてくれない。


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