親しい間柄ですか?
バースデイ
二度目の始業式を迎えるファーは、僕を見かけると早足で近寄ってきた。
「無事に進級しました。……クラスは、テスさんと同じです。ナナミヤからはたらきかけがあったようです」
「あ、そうなんだ」
研究所もたまには役に立つことをするもんだ、と内心思ったが、口に出すのは止めておいた。僕があまり良い感情を抱いていないとはいっても、ナナミヤはファーにとっては親のようなものだ。
よく見ると、確かにファーの制服のネクタイは最高学年を示す色に変わっている。
おや、と僕は首を傾げた。プログラムの設定上は、彼女は永遠の十七歳だったと思ったのだが。もしかすると、例えば誕生日が来たら設定が自動的に一歳上がる――そういうアバウトなものなのか。だとすれば、そもそも、誕生日はいつなのだろうか。
「じゃあ、ファーは今年度中に十八歳になるの?」
「そういうことになりますね。……初めて、誕生日を設定してもらいました」
「へえ? お祝いするから、教えてもらえる?」
わざとらしくはなかっただろうかと気を揉みながらも、僕はそう尋ねることに成功した。ファーは辺りを見回すと、僕にだけ聞こえるように囁く。
「あなたの家で一緒に過ごした、あの日です」
(500字)