オレと紗夜は、とても仲が良かった。
闘い続きで厭世的になっていたオレを、彼女は包み込んで癒してくれた。東京に来てから、真神以外での女友達は初めてだったから、とても嬉しかった。
それが死蝋の策略だったとしても。
紗夜は、控えめで優しくて女の子らしくて、男のなりをしてるオレでさえ、彼女のようになりたいと憧れたものだった。笑顔が綺麗で、でも嫌味がなくて、見るとほっとした。でも、彼女は、炎の中に消えてしまった。
オレのせいで。
今、オレは生きている。
彼女が護ってくれたから。
でも、胸が痛くて苦しいのは彼女がいないせい。
残されたものの悲しみ。護ってもらったくせに、死なずに済んだくせに、自分勝手だな、とも感じるけれど。
護るもののために自分の命を差し出したって、残されたやつはどうしたらいいんだ? そんなのは自己満足じゃないんだろうか。
紗夜を責める気なんか無いけど。 でも、後に残されたものは亡くした命を思い、護られたはずが傷ついていく。
何度も何度も考えた。あの笑顔を見せてもらったお礼は、どうやったら返せるのか。オレは、紗夜のために、これから何ができるんだろう、と。
紗夜の写真をぼんやりと眺めつつ、また考える。
本当に護るっていうのは、闘いの後に笑顔を見せてあげること。自分はこれからもあなたのそばにいるのだと、安心させてあげること。二人で笑い合えること。
そうじゃないだろうか。
そして、心に誓ったことがある。
もう、これ以上誰も死なせない。紗夜のような人間を出さない。
いつまでも皆の笑顔が見られるように。今のオレが思い付く、精一杯の恩返し。
それが、オレの出した結論だった。
今日からは、皆を護るために、もうちょっとだけでも頑張ってみようと思う。