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親しい間柄ですか?

09 誰でもいい

 学年が変わって半年、今日からは『後期』のスタート。委員や役員も改選され、新たな体制が始まる。
 僕も、ファーの世話役ではなくなった。
 たまたまクラス委員だったから彼女のお守りを頼まれていた、それ以上でもそれ以下でもないはずなのに、この寂しさは何だろう。そんなことを考えれば考えるだけ、気が滅入ってくる。
 そんな不純な思いを見透かしたかのように、ファーが僕の席へと近づいてきた。
「テスさん。……後期も、これまで通り面倒を見ていただけたらと思うのですが」
「でも僕、もうクラス委員じゃないよ」
「私の仕組みを最も理解して下さっているのは、テスさんです。誰でもいいわけではありません。……駄目でしょうか」
 ファーはわずかに眉を寄せると、真っ直ぐに僕を見つめた。そんな風に頼まれて断れるわけがないと、彼女は知っているのだろうか。
 僕はわざとらしく頭を掻き、悩むふりをしながら答える。
「うーん。……分かったよ。じゃあ、先生にはファーから言っておいてもらえる?」
 はい、といい返事をして微笑み、ファーは僕に頭を下げた。その頬が何となく赤く染まっているように見えたのは、きっと僕の気のせいだと思うけれど――。
(495字)
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