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親しい間柄ですか?

14 右手薬指

 クラスメイトを遠目で眺めながら、ファーが首を傾げている。不思議に思って声を掛けると、彼女は「指輪とは」と切り出した。
「既婚者が左手薬指にするものでは?」
 見ると、クラスの女子の右手薬指にはシルバーのリングが光っている。ファーのデータベースには、結婚指輪以外の項目がないらしい。
「右手にもするよ。ファッションが目的だとか、結婚前に好きな人に貰ったりとかだと」
「それは、特別な『好き』のことですね」
「ファーはそういう人いないの?」
 僕はなけなしの勇気をここぞとばかりに振り絞って尋ねた。いない、と言ってくれることを願いながら、ファーの口元を何気なく見守る。
 彼女はしばらく黙って自分の右手を眺めていたが、やがて途切れ途切れに白状した。
「『好き』は認識できませんが、顔を見ているだけで嬉しくなる人はいます」
「……じゃ、きっとファーはその人が好きなんだ」
「そうでしょうか。しかし、同時に寂しさ、悲しさを感じることもありますが」
「そういうもんだよ」
「心というのは、難しいですね」
 自分で訊いたことながら、僕の淡い期待は打ち砕かれることとなった。ファーの呟きは、まさしく今の僕の気分にぴったりの一言だった。
(498字)
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