繋がる空と

 梯子屋、コウリュの朝は早い。苗には、朝の手入れがもっとも重要だからだ。
 土の民は皆植物を扱うのが上手いが、特に優れた『緑の手』を持つ人間だけが梯子屋になれる。中でもコウリュは別格だった。適度な温度と少しだけの水、光、肥料。そんなごく普通の条件でも、コウリュが世話をすると『梯子』の苗は格段に大きく強く育ち、あっという間に天に届くのだった。

「こんにちは、お客なんですけど!」
 場違いなほど明るい、甲高い声が温室に響き渡ったのは、ちょうどコウリュが機械的に日課の水やりをこなしている時だった。水が一杯に入ったじょうろを地面に置き、額の汗を拭う。この家に客、しかも女性が訪れるなんて、いったいいつ以来だろうか。もしかしたら空耳ではなかったかと、コウリュは耳を澄ます。
「梯子屋さん! いないの?」
「今行きますから、待っててください!」
 幻聴などではなく、どうやら本物の客のようだった。女性の急かす声と同様、コウリュの返事もまた、温室にこだまして声の主へと飛んでいく。

 土で汚れた手を洗い、急ぎ足で温室の出入り口まで戻ると、ドアの向こうから少女がひょこっと顔を出した。
「はじめまして! ……私、レピといいます」
「レ、――僕はコウリュ、梯子屋です。お名前、ずいぶん珍しい響きですね」
 元気に名乗られたものの、耳慣れない名はまったく別世界の言葉で、コウリュにはうまく発音できそうになかった。うっかり間違えて呼ぼうものなら、お客の機嫌を損ねかねない。なるべくなら呼ばずにやり過ごしたいと祈りながら、コウリュは警戒しつつレピを見る。
 目が合うと、彼女は頭を下げるでもなく少しだけ首をかしげてにっこりと笑んだ。赤に近い銅色の長い髪が、その動きに合わせて揺れる。コウリュよりもいくぶん年下に見えた。
「空の上でも、あんまりいない名前かもね」
 でもコウリュも珍しいよと、レピは何の悩みもなさそうな顔で、やはり笑った。その背には確かに、白く頼りなさそうな翼が一対見える。それで改めてコウリュは思う――これまで預かった『翼』とはかなり印象が異なるが、やはりレピも間違いなく空から落ちてきたのだろう、と。だとすれば、厄介な客であることは間違いなかった。
 思わず漏れそうになったため息を飲み込んで、コウリュは尋ねる。
「……ご用ってのは、もちろん」
「はい。……私のために、梯子を育ててほしいの。お願いします」
 レピが深々と頭を下げると、長い髪が左右に流れる。そのおかげで、コウリュの視界からは隠れていた背中の羽根がはっきりと確認できた。

 雲の上で暮らす彼ら『翼の民』だが、まれにコウリュ達の暮らす大地へと落ちてくることがある。そんなとき、彼らの帰還を手助けするために身元を引き受け、天まで伸びる植物――通称『梯子』を育てて送り出してやるのがコウリュの仕事だった。
 翼があるとはいえ、彼らは長時間の飛行に慣れていない。いや、彼らにとって翼とは、今や自分たちの素晴らしさを誇るためだけの持ち物になっているのかもしれない。自らの力だけで空へ帰るには、あまりにか弱いのだ。
 翼の民との古い取り決めにより、梯子屋には一人還すたびにいくらかの報酬が出る。とはいえ、それだけではとうてい暮らしていけず、今ではこの仕事を続けている物好きはコウリュくらいのものだった。それに、コウリュにしても梯子屋は副職で、普段は花や野菜を作って生計を立てている。
 コウリュ自身、自分の能力や梯子屋という役割について深く考えたことはない。考えずともはっきりしているのは、梯子屋は日々を暮らしていく役には立たないという事実だけだった。

「一面、緑だね。全部コウリュが育ててるの?」
 レピの声で、コウリュは我に返った。
「……そうだよ」
「すごいよ! 空には土がないからね、こんなの初めて見たよ。ね、これ、なんて花?」
 彼女は目を輝かせ、物珍しそうに温室の中を歩き回っては、コウリュに花の名前を尋ねる。まるで観光にでも来たかのように無邪気にはしゃぐレピの顔には、落ちてきた者に独特の暗さや、故郷を懐かしむ感傷がまったく見つからない。それどころか、大地をめいっぱい楽しんでいる様子すらうかがえる。こんなに能天気な翼に、コウリュは初めて会った。
 レピの気に触らないかを心配しつつも、コウリュはつい訊いてしまう。
「君は、上に戻りたくはないの?」
「うん。ほんとはそんなに帰りたいわけじゃないんだけど、帰らなきゃいけないよね」
「大地を踏むの、嫌じゃない?」
「とっても楽しいよ」
 レピは、当然といった表情で丸い目を何度かまたたかせた。何の裏もなさそうなまっさらな瞳が、コウリュを射抜く。それがどうしても信じられずに、コウリュはなおも質問を重ねた。
「居づらくないの。自分と違うやつらに囲まれて」
「違うかなあ? 土の民と私、私とコウリュも、違うの?」
 本気で悩んでいる様子のレピが、かわいらしく首をひねる。虚を突かれて、コウリュは思わず沈黙した。自分の『緑の手』のことと同様に、『翼の民と土の民の違い』を考えたことはなかったかもしれない。うんうん唸りながら未だ悩んでいるレピに比べれば、自分は考えが浅いのだろう。
 しかし、空と大地との差がこれほどはっきりしてしまっている今、それを考えることが何になるのか、そしてどれほど悩んだら答えが出るのか、コウリュには見当もつかなかった。
 結局、口から出たのは陳腐な結論だった。
「……君たちには翼があるけど、僕にはないよ」
 レピには予想通りの回答だったらしく、間を置かずに反論が返ってくる。
「みんなそう言うけどさ、けど例えば、私にはコウリュみたいに梯子を育てる力はないよ。翼も同じじゃない? すごい違いなの?」
「翼のあるなしで住む場所から暮らしの水準まで決まるんだ。それは、変えられない事実だし、大きな違いだろう」
「そうだけど……。でも、私は――あ! ねえねえ、こっちは何?」
 見れば、レピはすでにコウリュの『本職』の仕事場である野菜畑へと駆け出した後だった。残されたコウリュは仕方なく、しかし妙に軽い心で、苦笑いを浮かべながら彼女を追うのだった。ただその心の隅には、レピの素朴な疑問がしっかりと居場所を占めていた。
 『私とコウリュも、違うの?』と。

「今回は特にうまく育てられたと思うよ。……もう、いつでも帰れるな」
 自分の言葉が未練がましく聞こえはしなかっただろうかと、コウリュはレピの横顔を盗み見る。幸いにもと言ったところか、彼女は初めて見る『梯子』――柱と言ってもいいほどに巨大な茎と蔓を天まで伸ばしている――の迫力に圧倒されているらしく、答えは返ってこなかった。
 つられてコウリュも梯子の先を見ると、空を覆う鉛色の厚い雲が鎮座していた。あの雲の上には、コウリュがまだ見ぬ、翼たちの国があるはずだ。

 コウリュの住む地の国には晴天というものがない。いつどんなときも曇り空の大地。『梯子』の葉陰でじっとしていると、肌寒さを感じるほどだ。一方、伝聞のみで想像するしかない雲上には、さんさんと陽の光が降り注いでいるはずだ。それが翼の民と土の民との間の溝をさらに深める理由にもなっているのだ。
 彼女がやって来て数日が経ち、親しく言葉を交わすうち、コウリュはやはりレピが普通の『翼』ではないのだと悟っていた。コウリュが知る翼の民たちは皆、高圧的で自尊心が異常に高く、とてもじゃないがまともな会話など成立しなかった。しかし、レピはまるで普通の友人のようにコウリュに接し、コウリュもまた何の気負いもなく彼女と話すことができた。もっとも、コウリュの方は途中から妙にレピを意識してしまって、ある意味辛くもあったのだが。

 梯子を見上げてしばらく黙っていたレピが、ようやく感嘆の声を上げる。
「ほんとに、空まで伸びてるんだねえ」
「そりゃ、僕が育てたやつだから」
 レピは手を叩き、「さすがだね!」と誉めてくれた。コウリュが自分の梯子を誰かに自慢したのはこれが初めてだったし、自分の腕を誇らしいと思えたのも初めてだった。しかし、梯子について語ることがコウリュを妙に焦らせているのも事実だった。
 彼女はそんなコウリュの気も知らず、梯子に寄りかかると太さを量るように両腕を回したが、幹の向こう側で両手が出会うことはなかった。コウリュの梯子はそれほどの胴回りを持っている。瞳を輝かせ、レピはいつものように明るく笑った。
「これだけ頑丈なら、座ったりぶら下がったりしても折れないよね。ゆっくり、休み休み戻れるね」
「ああ」
 思わず生返事をしてしまったが、レピは気にはしていなかったようだった。
 彼女は、何か言いたそうに口を動かしていた。最後に話したいことでもあるのか、それとも大地に留まりたいと少しは思ってくれて、別れの言葉が出ないのか――判断が付かず、コウリュが首をひねる。
 すると、レピは突然真顔で切り出した。
「……ね、聞いて。お別れだから、コウリュに一つ聞いておきたいの」

 彼女自身の口からお別れという言葉が出たのを認め、コウリュは途端に言いようのない不安に苛まれた。
 梯子が育つと帰ってしまうことなんて、はじめから分かり切っていたのだ。それなのに――これまでだって何度も『翼』を送り出しているのに、どうしてこんなに気になるのだろう。レピがちょっと変わった『翼』だから? それとも、それ以外の理由で?

 思い悩んでいると、「聞いてる?」と甲高い声にたしなめられた。慌てて頷くと、話に集中するべく彼女の方へと向き直る。これまでの数日で見たことのないほど、思い詰めたような表情だった。
 レピは、おもむろに口を開いた。
「私、古い本で読んだんだ。……昔は梯子屋さんがたくさんいて、みんな空と大地を自由に行き来してたんだって。それがいつからか互いに疎むようになっちゃって、梯子屋も、降りてくる翼の民も、登ってくる土の民も、少なく――いなくなっちゃったんだって。コウリュも、もちろんコウリュ以外の人たちも、土の民はこんなに優しいのに。どうして、『翼』と土の民は仲良くできないのかな?」
 レピは、大きくため息をついた。
「こんなこと言うと君は怒るかもしれないけど、やっぱり翼のあるなしが原因だと思うよ。……僕が世話した他の翼たちは、『翼』があるってだけで土の民を見下してた。翼は優れたものの証で、それを持たない地を這う民は大地に留まるしかなかったんだと言ってたよ。文字通り、住む世界が違うってね。梯子屋だからこうして話してはいるけど、本当は関わりたくはないんだって言われ続けてきた」
 コウリュは申し訳なく思いながらも、思うところを告げた。レピと過ごした数日間、心に刺さった疑問を考え続けたが、やはり結果は変わらなかった。
 レピは軽く唇を噛んでコウリュの話に聞き入っていたが、やがて肩越しに自らの背をちらりと見ると、どんよりと曇った表情を浮かべる。

 コウリュの心も重く沈むが、それが事実だ。これまでコウリュが見てきた翼たちは雲以外の上に立つのは初めてだと言い、自らの足に土埃がつくのを見ると顔をしかめた。梯子が育つ前から空を見上げ、戻りたいと騒いだ。コウリュと目を合わすことさえ嫌がり、結局詳しい素性も聞けぬままに別れの日を迎えてしまった。
 一方のレピには、先入観というものが一切ないように見えた。しかしそれは、ものを知らないわけではなく、ちゃんと勉強して相応の知識を持った上での判断によるものだった。それに比べたら、自分は――凝り固まったコウリュの頭は衝撃で、まるで何度も殴られたようにぐらぐらと揺さぶられた。この数日間、揺られながら考えに考えて、コウリュ自身も一つの結論を見つけ出していた。

 あからさまにがっくりと肩を落としているレピに、コウリュは「続きがあるんだよ」と、労るように優しく声をかけた。彼女は泣きそうにも見える瞳を揺らめかせてコウリュを見つめる。
「でもね、僕たち土の民だって、同じようなもんさ。あんな高飛車な奴らと一緒にされては困る。草花一つ育むことができない『翼』に、土の民の何が分かるんだ。『梯子』がないと家にすら帰れない、軟弱な民のくせに。……確かに、諍いの始まりは翼があるかないか、かもしれない。でも、もうそんなことはどうでもいいように思えるんだ。何より、君をどうやって引き止めようか――今はそればっかり考えてて、頭がいっぱいなんだ」
 恐らく真っ赤になっているだろう頬を照れ隠しで掻きながら、コウリュは勇気を振り絞ってレピに微笑みかけた。彼女はきょとんとした表情で硬直していたが、すぐに視線をあちこち彷徨わせ始めた。あーとかうーとか、妙な感嘆詞をはさみながら、必死に言葉を探している。

 しばらくして、レピの視線はコウリュの目を真っ直ぐ捕らえたところで落ち着いた。出会いの日と同じ、何の曇りもない輝きだった。
「実は私ね、黙って降りてきたんだ」
「黙って? ……家出?」
「ううん。私が大地を、地の民を見たいって言ったら、なんてことを言うんだって怒られちゃったんだ。でも私、それが自分のためにどうしても必要だと思ったの。……だから、みんなに見つからないように抜け出して来ちゃった。あ、ほんとだ。家出だね、これ」
 目を丸くしているコウリュを前に、彼女は照れくさそうに自らの髪をいじった。

 ――落ちてきたのではなく、自ら舞い降りたのか!

 レピが少し異質な『翼』であることに、コウリュはようやく合点がいった。地の民に会いに来た翼なんて、コウリュが知る限りはこれまでにいなかった。レピによれば大昔にはそんな人たちもいたのだろうが、その辺りになるともう伝説上の話だ。コウリュも嘘か本当か分からない噂としては聞いたことがあるものの、確かめる術はない。
 レピは、こわごわ、といった様子で、コウリュと目を合わせる。
「どうしても、梯子屋さんに会いたかったんだ。梯子が、いろいろなものを繋いでるってこの目で確かめたかった。場所と場所だけじゃなくて、例えば、人の――心とかもね。来てよかったって、ほんとに心の底から思ってるよ。翼があっても、梯子がなくても、大丈夫だって確かめられたもん。……本当は――最初の日にも言ったけど、帰りたくないんだ。できるなら、ずっとここにいたいよ。土の匂いは初めてだったけど、気に入ったし。珍しいものがたくさんだし。何より、コウリュがいるし――」
 彼女の瞳は、微かな光を浮かべていた。一緒に暮らした中で、不安そうなレピを見たのはこれが初めてだと、コウリュは気付いた。身内にことごとく反対されながらも、真実を求めに来たレピ。自分たちが決して好ましく思われてはいないと知りながら、彼女はどれほどの勇気を持ってこちらへと降りてきたのか、コウリュには想像も付かない。
「僕だって」
 僕だって空になど還したくないと続けようとして、一瞬顔をしかめるとすぐに笑顔に戻る。コウリュは頭を軽く振り、口をつぐんだ。この期に及んで彼女を困らせて、どうするというのだ。

「レ、ピ」

 コウリュは初めて彼女の名を呼んだ。やはり上手くはなく、たどたどしい発音だったが、レピはそれを気にすることもなく「なに?」と返す。その照れ笑いを目にして、コウリュの心は締め付けられながらも、温かく、大きくなっていくのだった。
 『緑の手』は、このためにあったのだろうか。空と大地だけではなく、人と人の心を結びつけ、垣根を取り払うために。
「やっぱり、君は帰らないと。帰って、君の考えを空に広めなきゃ。そしたらきっと、また会えるよ。……僕も頑張るから。とびきりの梯子を準備して、いつか必ず会いに行く。そうだな、枯れない梯子なんてどう? それならいつでも空に行けるだろ。そのときは翼が折れるくらいに」
 ぎゅっとね、とコウリュが冗談めかして両手を広げると、間髪を入れずレピが飛び込んできた。予想外の衝撃にコウリュは一瞬ふらついたものの、何とか倒れずに踏みとどまった。しかし、コウリュ同様に紅潮した彼女の頬がすぐそばにあるのに気付き、再び頭がくらくらする。
 そんな情けないコウリュの姿などお構いなしに、レピは早口でまくし立てた。
「それ、素敵! 私、それさえ聞けば何でもできる! いつか絶対に変えてみせるよ!」
 レピの翼がさらりという軽やかな音を立て、コウリュの腕の外で広がった。彼女の小さな身体には不釣り合いなほどの大きさ。ぴんと伸びた風切りが、薄暗い大地を照らすかのように白く輝く。
 レピ自身も背筋を伸ばし、ゆっくりと一歩後ろへ下がった。
「……だから、行くよ。『その時』になったら、ちゃんと使いの者を正面から寄越すから」
「使い?」
 怪訝な顔のコウリュに、レピは悪びれもせず告げる。
「黙っててごめんね。私、レイピディナ・フォルナっていうの」
「フォルナ――」
 それは世情に疎いコウリュでさえも知っている、空で最も高貴な名だった。翼の王が代々受け継ぐ、輝かしい称号。確か現王には娘が一人いたと聞いたが――では、まさか彼女が!
 唖然として立ちつくすコウリュに向け、レピはいたずらっぽく笑うと、翼をはためかせ始める。ふわりと起こった風はすぐに、大地の砂を巻き上げる大きな流れになった。レピのあかがね色の髪も、『梯子』の葉や末端の蔓もざわめき、なびく。思いのほか力強い羽ばたきに、コウリュはますます絶句する。吹き付ける風と砂埃で、レピの顔がよく見えなかった。
「またね、コウリュ」
 レピが地面を蹴った。風に乗って高く舞い上がる彼女を追いかけるように、コウリュは叫んでいた。
「レピ、気を付けて帰れよ!」
 あえてフォルナではなく、まだ上手には呼べない名を口にする。レピは地上のコウリュを見下ろし、ちぎれそうなほどに手を振っていた。
「ありがとう! ……梯子も、ありがとう。お話、聞いてくれてありがとう。それから――」
 急に途切れた声。辛うじて、彼女の口が動いたのだけは見て取った。何かを伝えようとしているが、強風にかき消されてコウリュのところまでは届かない。
「風の音で、聞こえないんだ!」
「……次に会うときまで、秘密」
 レピの姿はぐんぐん小さくなり、やがてコウリュの視界から消えていった。まるで彼女の置きみやげのように返ってきたのは、楽しげなレピの声。それで、先ほどは彼女がわざと小声で話したのだと分かった。
 型破りな『翼』が去った大地で、コウリュは空を見上げながら「やってくれたな、姫様」と独り呟く。『梯子』の先にある未来を、想いながら。

 後に、若き翼の女王は土の民――まれに見る優れた『緑の手』を持つ梯子屋――を伴侶に迎えた。空と大地とは常緑の梯子で結ばれて、永く永く栄えたという。